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<地方の取り組み>新しいしごとを造る

JAREC現地レポート No.2 熊本市(H30.8)
熊本市産品事典による販路拡大に向けた取組


農業をはじめとした第一次産業においては、安定的な収入源の確保・拡大の方策の1つとして、販路拡大に向けた取組が展開されています。今回、農水産品の生産者や食品製造事業者等の販路拡大を進めている熊本市の取り組みについて、熊本市 農水局 農政部 農業政策課 農水ブランド戦略室 参事 杉本祥子氏にお話を伺いました。

取材協力頂いた杉本 祥子氏

取材協力頂いた杉本 祥子氏
熊本市産品事典とは?

「●●産の野菜をぜひ扱いたいのですが・・・」、「●●市で取り扱っている食材や加工品の一覧表はありませんか?」。全国各地の小売業や飲食店等の流通業者から、このような問い合わせを受けている自治体の方も多いのではないでしょうか。おそらく、地域内で生産・出荷している農水産物の種類や量はわかっていても、「個別の取引に対応できるか」までは把握している自治体は少ないのではないでしょうか。
熊本市でも同様の状況でした。そこで、個別の取引等に対応可能な生産者や加工業者等とその産品の情報把握とともに、広く情報提供することを目的とした熊本市産品事典(以下、「産品事典」)のWEBサイトを2014年に開設しました。
2018年8月20日時点で57社231品目が登録され、開設以降、35件の新規取引が始まっております。
図表1 熊本市産品事典」について(熊本市報道発表資料)
図表1 熊本市産品事典」について(熊本市報道発表資料)
出典:『熊本市・崇城大学・熊本ネクストソサエティ(株)』の3者連携協定締結について
http://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=21182&sub_id=1&flid=143211
新たな取組① ~生産者用WEBサイトの開発~

産品事典の開設以降、熊本市や産品事典のWEBサイト運営業者である熊本ネクストソサエティ株式会社に対して、具体的な取引を想定した問い合わせが増えてきました。流通業者から問い合わせが1件あると、該当する産品を扱っている生産者や加工業者等約20-50社に対して、電話・FAX・メールで確認をしなければなりませんが、生産者等では、現場作業中等で即座に回答できないこともあり、結果として、実際の取引に結びつかない状況が有る事が分かりました。
そこで、生産者等がスマートフォンによる回答や情報更新ができるような生産者用WEBサイトを本年10月にリリースすることになりました。

新たな取組②
~熊本連携中枢都市圏17市町村への対象地域拡大~


流通業者から「熊本産の食材を扱いたい」という問い合わせを受けても、時期等の関係で必ずしも熊本市産で対応できず、お断りしなければならないケースもあります。そこで、産品事典の掲載対象を、日頃から圏域全体の経済成長のけん引や生活関連機能サービスの向上等に連携して取り組んでいる熊本連携中枢都市圏17市町村に拡大することとしました。
具体的には、本年8月に同都市圏の自治体担当職員向け、9月に同都市圏内の生産者・食品製造業者を対象に、産品事典等も含めた販路開拓に係る事業説明会をそれぞれ開催することとしております。
なお、同都市圏における連携取り組みは、様々な分野で実施されていることもあり、今回の取組についても熊本市として積極的に推進されているとのことです。
図表2 「フードバンクインデックス」システムのしくみ
図表2 「フードバンクインデックス」システムのしくみ
出典:『熊本市・崇城大学・熊本ネクストソサエティ(株)』の3者連携協定締結について
http://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=21182&sub_id=1&flid=143209
新たな取組③ ~フードバンクインデックスとの連携~

産品事典のWEBサイトを運営している熊本ネクストソサエティ株式会社では、「フードバンクインデックス」の構築・稼働を予定しています。これは、生産(農業者・農産物等)、流通(販路情報・売上情報等)及び消費(消費履歴・栄養学等)に関する情報をそれぞれデータベース化するとともに、それらの情報をマッチングすることで、農業者等の販路開拓を積極的に推進するクラウド型システムを、崇城大学とともに構築していくもので、別途、熊本県より「地域経済牽引事業計画」として承認されている事業です。
これを受けて、熊本市は、本年7月26日に、崇城大学、熊本ネクストソサエティ株式会社との3者で「IoT・AIを活用した農業者及び食品製造業者の販路開拓に関する連携協定」を締結し、まずは、産品事典のフードバンクインデックスとの連携を進めていく予定としております。
図表3 連携協定における3者の役割
図表3 連携協定における3者の役割
出典:『熊本市・崇城大学・熊本ネクストソサエティ(株)』の3者連携協定締結について
http://www.city.kumamoto.jp/common/UploadFileDsp.aspx?c_id=5&id=21182&sub_id=1&flid=143209
図表4 フードバンクインデックスの概念図と生産者・加工業者のメリット
図表4 フードバンクインデックスの概念図と生産者・加工業者のメリット
出典:熊本市提供資料に基づきJAREC作成
今後に向けて~JAREC所感

フードバンクインデックスについては、これから具体化に向けた検討がなされているとのことでしたが、現時点では、①マッチングに留まらず、受発注・物流も含めた流通に係る機能を担う、②消費者のデータも収集・活用することが想定されているとのことです。
生産者・加工業者の立場とすると、直接の販売先となる流通業者のデータに留まらず、消費者の購買データ等は、今後の商品開発や生産計画の精度向上に活用でき、結果として、売上増や在庫適正化、さらには物流効率化や食品廃棄物削減にも貢献できると思われます。
特に、我が国における食品廃棄物は年間2,848万トン(平成27年度)、このうち本来食べられるにも関わらず捨てられてしまう「食品ロス」は年間646万トン(平成27年度)もあり、日本人1人1日当たりに換算するとお茶碗1杯分のご飯の量を捨てていることとなります。販路拡大とともに、このような社会的な問題の解決に資する可能性のある取組を後押しすることも、自治体の役割として今後より重要になってくるのではないでしょうか。

取材協力:熊本市 農水局 農政部 農業政策課 農水ブランド戦略室 参事 杉本祥子氏
URL(産品事典のWEBサイト)http://sanpinj.jp/
E-MAIL nousuibrand@city.kumamoto.lg.jp
取材・文責:栗原 純一
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